シンガーソングライターの綿引ゆうです。
ピアノで弾き語りをするとき、曲によってリズムパターンを変えると、いろいろな表現ができますよね。
ですが、複雑なリズムになるほど、左手のベースラインを弾くのが大変になってきます。左手が、思うように動かなくなるのですよね。
私も、同じ悩みを抱えていました。この時、周りの上級者に「どんな練習したらいいか」と尋ねて回りました。
それをいろいろ試した結果、一番効果があったトレーニング法をお伝えします。
左手の役割
ピアノ弾き語りをする上で、「左手」は非常に重要な役割をしています。
具体的には、主に次の2つの役割になります。
リズムを刻む
左手はリズムを担っている重要なパートなので、正確に弾かないといけません。リズムというのは音楽の基盤であり、これが崩れると全てが崩壊してしまいます。
例えば、建物を建てる時には、必ず土台を固め、その上に建物を建てていきますよね。もし土台が崩れてしまったら、その上の建物は倒れてしまいます
リズムが崩れると、音楽全体が崩壊してしまいます。ですので、左手は何があっても崩れない基盤でなければいけません。
コードのルート音を鳴らす
もう一つの役割は、コードのルート音を鳴らすというものです。
コードのルート音というのは、非常に重要な音です。
仮に「歌の1フレーズ、歌詞を間違えた」とか、「右手で弾くコードを一つミスした」としても、ベース(コードのルート音)さえしっかり保っていれば、演奏にさほど影響はありません。
ですが、「左手のルート音を間違えてしまった」となると、話は別です。
例えば、曲の最後のルート音を、誤って弾いてしまったとします。そうなると、曲が終わったように聞こえません。
宙ぶらりんのような、なんとも言えない気持ち悪いサウンドになってしまいます。聞いているお客さんは、まだ曲が続くのかと勘違いして、変な沈黙ができてしまうでしょう。
ですから、「歌や右手はミスしてもなんとかなるが、左手は絶対にミスしてはいけない」のです。
このように、「弾き語りにおいて左手が重要」だということはお分かりいただけましたか?
より良い演奏をするためには、左手を強化するトレーニングが必要になるのです。
バッハトレーニング
左手を鍛えるためには、バッハをトレーニングに取り入れていきましょう。
「私がやりたいのはクラッシックではないのに、なんでバッハ?」
と思うかもしれません。
でも、あえてバッハを弾くことをおすすめします。
多声音楽
バッハの音楽は、多声音楽です。
多声音楽とは、一つの曲の中に複数のメロディーが流れている音楽のことです。
小フーガト短調 BWV578(バッハ)
この曲は、最初は1つのメロディーから始まります。そして、0:17くらいからそれにかぶさるように、2つ目のメロディーが加わってきます。
もっと身近なもので言えば、「かえるの歌」ですね。誰もが、一度は歌ったことがあると思います。
1人目が
「かーえーるーのーうーたーがー」
と歌い、次の
「きーこーえーてーくーるーよー」
と同じタイミングで、
2人目が、
「かーえーるーのーうーたーがー」
と追っかけていくあれです。
このように、何人かが演奏しているように、複数のメロディーが聞こえてくるのが多声音楽です。
ピアノの場合、同時に幾つもの音を出すことができます。両手を使うことで、1人で複数のメロディーを弾くことが可能になります。
ですが、この多声音楽をピアノで弾けるようになるためには、頭の中に複数のメロディーを同時に鳴らすことができないといけません。
ポップスなど現代の音楽はメロディーが一つしかない音楽です。ポップスしか演奏をしたことがないと、複数のメロディーを同時に頭の中で鳴らすという感覚を意識できません。
ですが、バッハなど多声音楽を学ぶことで、複数のメロディーを聴くことができるようになるのです。
そして、複数のメロディーが聴こえるほどに耳が鍛えられると、ピアノも自然とうまくなります。まず耳を鍛えると、不思議と指も動くようになるからです。
それから、多声音楽は右手だけでなく左手でもメロディーを弾きます。これにより、今まであまり使っていなかった左手が鍛えられます。ベース音を単純なリズムで押さえるだけでなく、細かい装飾音などをつけて、より豊かなベースラインを弾くことができるようになるのです。
やってみると、最初はすごく難しく感じると思います。ですが、これができるようになると、ピアノが飛躍的に上手くなります。
オススメは「インベンション」
バッハの中でも、オススメは「インベンション」です。1番から15番までの曲集になっています。
私は、「インベンションとシンフォニア(Inventionen und Sinfonien)」(下の写真)という、シンフォニアも一緒になっている楽譜を使用しています。
この楽譜はいろんな出版社から出ていますが、私はヘンレ版(G.Henle Verlag )を使っています。ピアノの先生に伺うと、だいたいこれを勧められるからです。ヘンレ版は、楽器店では置いていないことも多いのですが、インターネットで購入することができます。
バッハ, J.S: インヴェンションとシンフォニア(二声と三声のインヴェンション) BWV 772-801/シェイデラー編/シュナイト 運指/原典版/ヘンレ社/ピアノ・ソロ
私は、この中の「インベンション8番」を、まず1回弾いてから弾き語り練習に入ります。特に「8番」は右手、左手とも別々に指を細かく動かしますので、指のウォームアップにも調度いいのです。ちなみに、こんな曲です。
これは少し難しいので、インベンションをまだ弾いたことがない方は、入門編の「インベンション1番」から始めるのがいいです。
短い1分足らずの曲ですので、まずは聴いてみましょう!
コード弾きしかしたことがない方は、あまりの難しさに投げ出してしまうかもしれません。
ですが、頭の体操だと思って1フレーズでもいいのでやってみてください。まずは、片手ずつ弾けるようにしてから、両手にチャレンジしていきましょう。
私が別記事で紹介している、両手で弾くための練習法も参考にしてみてくださいね。
まとめ
ピアノ弾き語りにおいて、「左手」は次のような役割をしています。
・リズムを刻む
・コードのルート音を鳴らす
という、絶対に間違いが許されない大事なパートなのです。
そして、左手を鍛えるには、「多声音楽」を学ぶといいのでしたね。
「バッハのインベンション」を1曲でいいので弾けるようになりましょう。
そして、できれば暗譜してしまいましょう。
毎日の練習の最初にこれを1回弾いて、右手、左手の2つのメロディーを同時に頭の中で鳴らしてから、弾き語りの練習を始めてください。
これをすることで、左手のベースラインが格段にうまくなります。装飾音や複雑なリズムを弾きたい時にも、余裕で演奏できるようになりますよ。
ぜひ、今日からのトレーニングでインベンションを弾いてみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。